nakatanimiki-shiseikatsu
1.フロンティア(Album Version)
2.雨だれ
3.temptation
4.Confession
5.クロニック・ラヴ(Remix Version)
6.Spontaneous
7.夏に恋する女たち
8.Automatic Writing
9.フェティシュ(Folk Mix)
10.Leave me alone…
11.promise
12.all this time
13.temptation(Drum Mix)

架空のサウンドトラック

中谷美紀の作品はどれもホントに繊細で美しい。坂本龍一がプロデューサーというのも大きいと思うが、歌声をフィーチャーするというより、エレクトロ色を前面に押し出し、サウンド面へのこだわりを強く感じさせた作品である。彼女のガラス細工のような美しさ、謎に包まれた佇まいなどが、作品を通してしっかりと表現されている。

人気女優がリリースしたとは思えない陰鬱さが衝撃的な前作『cure』は、雰囲気、歌声、サウンドプロダクトなどがとてもいい具合に溶け合った傑作だった。一方、『私生活』は、坂本龍一によるサウンドプロダクトが前面に出た作品で、圧倒的な虚無感を感じさせるものに仕上がっていて、これまた驚きの作風となっている。

もはやアンビエント(環境音楽)とも取れるその音空間は、いわば”架空のドラマのサウンドトラック”と言っても過言ではない。個人的には専ら読書をする時、はたまた無心になりたい時などに引っ張りだして聴きたくなる作品である。

単純に聴き応えのある曲としては#1「フロンティア」、#5「クロニック・ラヴ」、#7「夏に恋する女たち」などがあるが、生活音や会話で構成されたインタールードのような曲が数多くあり、タイトルの『私生活』を体現したようなアルバムと言える。個人的に中谷美紀の曲の中で一番好きな曲は#2「雨だれ」で、冷気漂うかのようなシンセの音、そっと息を吹きかけるような優しい歌声の重なりがたまらず、専らリピートの対象である。

生活感があるようで無いような…とても不思議な音世界。真っ白い壁に囲まれた部屋に日差しが差し込んだり、雨雲で薄暗がりになったりと、曲が進むごとに部屋の雰囲気がゆっくりと変化していく。まるで、窓から外界の様子を伺うインドアな少女の、その生活感を盗み見ているような感覚とでも言おうか。一つ一つの音から生まれるイメージを大切にしながらじっくりと味わいたい、非常に聴き応えのある作品であると思う。

坂本龍一の色が強まり、中谷美紀の歌声が積極的に取り入れられていないということで、ファンからは不評の作品だが、個人的には前作『cure』とはまた別の種類での名作だと思っている。じっくり聴くにも、肩の力を抜いて聞き流すにも最適な音楽なので、ふと聴きたくなるのは本作『私生活』の方が多かったりする。

…それにしても中谷美紀の作品はなんでこんなにも内省的な作品が多いのだろうか。とてもじゃないがどれも大衆的な作品ではないし、大女優が出す音楽作品とは到底思えない。ただ、イメージも相まったとても繊細で綺麗な音楽は、個人的にはとても気に入っているし、そんな作品をリリースした中谷美紀をより一層好きになってしまったのも事実。

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nakatanimiki-cure
1.いばらの冠
2.天国より野蛮
3.砂の果実
4.水族館の夜
5.鳥籠の宇宙
6.Superstar
7.キノフロニカ
8.corpo e alma

ダークサイド全開、ミステリアスなイメージが引き立つ佳作

そもそも、ドラマを見て彼女について調べようとしなかったら、中谷美紀が歌手活動をしていた事実すら知らないままだったかもしれない。冷たいほどの美しさを持ち合わせながらも、陰影の濃さも感じさせる、とてもミステリアスで知的な印象が強い女優、中谷美紀。そのイメージは、歌手活動でも大いに発揮されている部分であったりもする。

特に本作「cure」は、上記の彼女のイメージを最大限に押し広げたようなアルバムである。透明感のある歌声から、彼女の美しさがこれでもかと表現されたPVの作りまで、ガラス細工のような繊細さが広がっている。

とは言えそれは、人気女優がリリースしたアルバムだというのに、明らかに大衆向きではなく、聴く人を選ぶ作品に仕上がっている。堕落していく女性を演じながらも、僅かな光を求めて力強く立ち上がろうとする。・・・退廃芸術とでも言えそうな美しさを放つこの作品は、非常に重苦しく、聴いている方が病んでしまいそうなほどの緊張感が張り詰めている。真っ黒なジャケットもそれを如実に表している。

特に衝撃だったのは#3「砂の果実」。この曲は坂本龍一の「The Other Side of Love」のカバー曲だが、歌詞が、”生まれてこなければ本当は良かったのに”など、ネガティブ全開。他にも#5「鳥籠の宇宙」においては不穏な空気が辺りを包み込み、暗闇で一点を見つめながら体育座りでぼんやりと歌っているさまをイメージさせる。一方で#4「水族館の夜」のような幸福感のあるポップな曲で、アルバムの重苦しさから開放される瞬間もある。にも関わらず、アルバムのイメージにうまく溶け込んでいるのがまた見事である。

ちなみに本作は2枚目のオリジナルアルバムで、坂本龍一がプロデュースを行っている。そして現時点での最終作3rd「私生活」までを手がけることになる。しかし、次作は坂本龍一の色が強くなってしまうため、彼女の佇まいや魅力を他のメディアで知った方には本作「cure」をぜひ聴いてもらいたい。彼女の佇まい、美しさ、魅力などがダイレクトに伝わるのはおそらくこの作品だと思う。

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