90年代にカリスマ的人気を博した、清春(Vo)と人時(B)によるロックバンド。ヴィジュアル系バンドとして出発したバンドだが、作品のリリースを重ねるごとに激しく音楽性や見た目を変化させていった。

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1.ZERO
2.ROCK’N’ROLL GOD STAIR
3.I HATE YOUR POPSTAR LIFE(Album ver.)
4.CLARITY
5.A LULL IN THE RAIN
6.FREE LOVE,FREE SEX,FREE SPEECH
7.MAD FLAVOR
8.ゲルニカ(Album ver.)
9.SOLITUDE
10.BLACK HOLIDAY
11.CALLING(Album ver.)
12.黒と影
13.KINGDOM(Album ver.)
14.LEAP(BONUS TRACK)

再結成後も変わらぬサウンド

本作は2014年にリリースされた、再結成してから二作目に当たる作品。再結成直後の作品は未聴だが、リードシングル#3「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」のカッコよさに惹かれたのと、清春出演のとあるネット番組を観たのをきっかけに、本作を聴きたくなった。

ギターを食ったような人時のベース、シャウトとビブラートを取り入れた清春のヴォーカル、そして刺々しさを失わないダークで重たいサウンドは健在で、全盛期からの衰えを殆ど感じさせないところがまず衝撃的。迫力で言えば、むしろ本作のほうが有るのかもしれない。またジャケットやタイトル、シングルから、どこかミステリアスな雰囲気を想像していたが、全体的に小難しい楽曲は無く、力強いバンドサウンドでガンガン突き進む。最初のインパクトも抜群で、聴きやすい楽曲が多いのも特徴的だった。

個人的に最も愛聴しているのは、PVのカッコよさに惚れた#3「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」。棘のある歌詞と、シャウトが印象的なヴォーカル、スピード感のあるハードロックサウンドがとても痛快。以前の黒夢を彷彿とさせる楽曲で、変わらない魅力をぶちまけてくれている。他にもホラー映画の主題歌になった#8「ゲルニカ」や、ゆったりとしたテンポで力強く進む名曲#13「KINGDAM」などが本作のハイライトとなっている。

彼らの評価の常として、”黒夢らしい”とか”SADSっぽい”、”ソロに近い”といった、”どの活動の音楽性に近いか”という話題がされる。しかし清春としては、違いを意識してバンドを組んだりソロを展開しているわけではないようで、その時にやりたい音楽をやっているに過ぎないらしい。

そういう気まぐれ(?)で自由奔放な活動が、激しく変わる音楽性やバンド活動遍歴などにも表れている。ファンとしては不安定な活動遍歴にハラハラしてしまうが、元々コンスタントに作品を作ってライブをするような、型にはまった活動はできない質なのだろうし、それが黒夢らしいとも言える。

ところでここ数年、90年代に全盛期を迎えて活動休止(解散)をしたバンドの再結成が目覚ましい。再結成したバンドの活動を拝見すると、メンバー内の不和や全盛期の疲れから解き放たれ、とても活き活きしているように感じられる。中でもLUNA SEAやThe Yellow Monkeyはそれが顕著で、黒夢も例外ではない…はず。

再結成を果たし、二枚の作品をリリースした現在は安定した活動を予期させるが、今後どのように活動を継続していくかは大きな関心事である。

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1.Noise Low3
2.FAKE STAR
3.BEAMS(FAKE STAR VERSION)
4.BARTER
5.SE I “SUNNY’S VOICE”
6.SEE YOU(FAKE STAR VERSION)
7.REASON OF MY SELF
8.SE II
9.SEX SYMBOL
10.Cool Girl
11.S.O.S
12.SE III
13.HYSTERIA’S
14.ピストル(FAKE STAR VERSION)
15.夢
16.「H・L・M」is ORIGINAL
17.SE IV “EITHER SIDE”

ポップの仮面を被った劇薬パンク・ロック

黒夢の4thアルバム。メンバー自ら”売れ線狙いのナンバー”と位置付けてリリースした名曲③を収録。他にも卒業をテーマにした⑥のようなポップなシングルもリリースするなど、表向きでは大衆受けのポップな音楽性へシフトしたように見えたこの時期。しかしそれと相反するように、棘を鋭く生やし始めた清春の歌詞と、彼の言葉に説得力を増させるサウンドの攻撃力。それはまるでポップな仮面に真実の顔を隠しているかのようである。おかげで、彼ら自らが③でポップを体現したことが当時の音楽シーンへの皮肉にも聞こえてしまい、これは彼らの計算通りといったところなのかもしれない。

今回の作品は、いくつかの曲の合間にSEトラックを挟み、複数のプロットを重ねたような構図になっている。清春曰くこのSEの効果は、リスナーに場面転換や小休止を期待してのこと。
今作の刺々しさを体現するタイトルトラック②は一番の目玉だが、個人的には次に続く③④がとても素晴らしく感じた。それぞれが全く違う空気を放っていながら隣り合わせに並んでいるこの二曲は、聴くほどに味が出てくる。ピコピコした電子音をバックに暴力的に疾走する④は特にお気に入り。他にも情緒的で繊細さが際立つ⑬は、美意識の高さも感じられる名曲。シングルとして出された、サビのフレーズが印象的な⑭は、SEの音が大きくなっている。このように電子音などの音響効果を全体に存分に生かされていることにも注目したい。

本作から音楽シーンにかみつき始めた黒夢。本作以降の作品はキレぎみで、且つパワフルで禍々しいオーラを放っているため、バンドはポップとは無縁の存在になっていく。もっとも、それが黒夢らしい姿なのかもしれないが、あれこれと模索しながらも様々な音楽性に染められたこの作品にも是非とも触れておきたい。バンドの以前と以降の雰囲気の両方を味わえる、黒夢にとって大きなターニングポイントとなった作品。

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