direngrey-vulger2
1.audience KILLER LOOP
2.THE IIID EMPIRE
3.INCREASE BLUE
4.蝕紅
5.砂上の唄
6.RED…[em]
7.明日無き幸福、呼笑亡き明日
8.MARMALADE CHAINSAW
9.かすみ
10.R TO THE CORE
11.DRAIN AWAY
12.NEW AGE CULTURE[
13.OBSCURE
14.CHILD PREY
15.AMBER

地を這う和風ニューメタル

2015年現在に至るまで、様々な”痛み”を生々しく、時にはグロテスクに表現してきた異色のロックバンド。ライブでは身体を傷めつけることも厭わない、もはや見ているこっちが顔を引きつらせてしまうほどのパフォーマンスを見せる。

そんな独特な表現力が魅力の彼らだが、新作がリリースされるたびに注目されるのは、その音楽性の行方。作品がリリースするごとに表現方法が変わるためである。そのため個々の作品に優劣は無いが、『Vulgar』は特に評価が高い作品ではないかと思う。

前作『鬼葬』辺りから、いよいよヴィジュアル系路線から脱却し、表現力、サウンドが破竹の勢いで進化しているのが感じられたDir en Grey。『鬼葬』は、ひとことで言うとエログロな内容で、狂気すら感じる背徳的な作品だった。

一方本作は、よりサウンドの重量感が増しており、海外のニューメタル勢から影響を受けたようなバンドサウンドに圧倒される。メンバーが本作を表現する際、「墨汁のついた太い筆で塗りたくったような作品」…のようなことを何処かで言っていたような記憶がある。直線的で突進力がありながら深みも感じさせる本作にはピッタリの表現である。

まずは#1「audience KILLER LOOP」から#3「INCREASE BLUE」辺りまで、ライブ映えしそうな迫力のある曲で一気に畳み掛ける。その後、7弦ギターを駆使した本作中最も重たいサウンドで狂い回る#13「Obscure」、絶叫中心で駆け抜けるシングル曲#14「CHILD PREY」など、一聴でのインパクトは相変わらず大きい。

ただ、こうやって荒々しく表現していても、所々にしっとりとした”和”のテイストを組み込んできたり、綺麗な京のヴォーカルのサビが印象的だったりと、決してやかましいだけの作品ではないことは付け加えておきたい。#5「砂上の唄」に関してはその証左と言える。彼らの曲は癖があって聴きづらいものが多いが、だからこそ好きだったりする。一曲の中でも聴きどころは多く、一秒たりとも聴き逃すまいとじっくり聞き込みたくなる。…それが彼らの音楽の魅力ではないだろうか。

direngrey-marrowofabone
1.CONCEIVED SORROW
2.LIE BURIED WITH A VENGEANCE
3.THE FATAL BELIEVER
4.AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS
5.GRIEF
6.凌辱の雨
7.DISABLED COMPLEXES
8.ROTTING ROOT
9.艶かしき安息、躊躇いに微笑み
10.THE PLEDGE
11.REPETITION OF HATRED
12.THE DEEPER VILENESS
13.CLEVER SLEAZOID

溢れだす溶岩

DIR EN GREYの6作目にあたるオリジナルアルバム。

前作「Withering to Death.」は、繊細なメロディと重層なバンドサウンドが織りなす作品となり、彼らの一つの完成形とも言える傑作であった。それを経て作られる本作は、果たしてどのような音楽性とメッセージが提示されるのか・・・。それは言うならば、黒に限りなく近い赤色がイメージされる作品で、まるで流れだした溶岩に覆われたようなオドロオドロしさを持っている。

ココに来てメタル色が一気に強まり、より重層で、より暴力的になったサウンド。全編通して地を這うような重さで地面を転げまわり、彼らが表現している「痛み」が直接的にぶつかってくる。ヴォーカルもいつも異常にキレており、ホイッスルボイスが所々で使われるようになった最初の作品でもある。このように、前作とは対照的にメロディを廃した曲が多いため、今まで以上に賛否を巻き起こすことになった作品である。

このような作品になった背景には、彼らが前作「Withering to Death.」リリース以降、本格的な世界進出を果たしたことが関係しているのだと思う。世界各国でもリリースされた前作を皮切りに、海外の大型ロックフェスの参加など、活動範囲、影響範囲が一気に広がったことが、本作に影響を与えていることは想像に難くない。

DIR EN GREY史上最凶の曲と言われる#4「Agitated Screams of Maggots」、より重たいサウンドアレンジが加えられた#13「Clever Sleazoid」#6「凌辱の雨」など、シングル群が既に重苦しいので、それらが気に入っている人には受け入れられる作品であると思う。瞬間的な破壊力が凄まじく、これに耐性のある人には好まれ、一気に引き込まれるアルバムだろう。しかし、前作や初期のメロディアスなサウンドが好きな方には、本作の暴れまわるサウンドには辟易してしまう可能性がある。ただ、冒頭の#1「Conceived Sorrow」や、後半の#9「艶かしき安息、躊躇いに微笑み」#10「THE PLEDGE」といった、彼らの和テイストを取り入れた”聴かせる楽曲”もあり、一つの音楽性に終始しない幅広い音楽性は相変わらずである

聴くタイミングや人を限定するアルバムになりはしたが、キレッキレのサウンドが個人的には癖になってしまい、一度ハマってしまったことで、むさぼるように聴きたくなる時がある。お気に入りは、ゆったりと進んでいく#8「Rotting Root」と、重いリフで突き進むドス黒さが癖になった#12「The Deeper Vileness」。この二曲は、シングル以外で本作を支える、重要な立ち位置にある曲だと思っている。

この作品に限らず本作以降にリリースされたアルバムは、いずれも窓口が狭くなっているが、一度入ってしまえばその世界にどっぷりとハマることになる。それはつまり、このバンドが他を寄せ付けない、自分たちの世界観を確立した証拠でもあると言える。そういう意味では、本作は彼らにとって大きな転機となったはずの作品で、彼らの歴史も「THE MARROW OF A BONE」以前・以降、という風に分けられるかも知れない。

さらに評価すべきは、世界規模のバンドになっても力を出し惜しみせず、常に全力で音楽と向き合う姿勢。彼らは常に、丸くなることなく「痛み」を表現するために試行錯誤を続け、そしてこれからも「痛み」を表現していくだろう。正直、彼ら以上に音楽に命をかけてるバンドが他にいるだろうか。DIR EN GREYの存在はもはや孤高という他ない。

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